2008年3月28日金曜日

第一回 議論の端緒 -ジニ係数-


格差議論の王道は何と言っても、やはり経済格差をめぐる議論です。 というわけで、まずは経済格差論を見ていきましょう。

経済格差議論の端緒となったのは、橘木俊昭京都大学教授が1998年に出版した『日本の経済格差』です。

この本のなかで、橘木教授はジニ係数という指標を用いて、1990年代以降、日本の経済格差が拡大傾向にあることを指摘しました。

ジニ係数は、社会の不平等度を測る統計指標で、1932年にイタリアの統計学者コッラド・ジニによって考案されました。係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差が少なく、1に近いほど格差が大きい状態であることを示します。  

上の図は1972年から2002年までの日本のジニ係数の推移をまとめたものです。左が再分配前所得のジニ係数で、右が再分配後所得のジニ係数。

再分配後所得のジニ係数は、1981年の0.314から2002年の0.381にまで増加しています。特に1990年代以降、再分配前所得と再分配後所得、双方のジニ係数が増大傾向にあることが分かります。

このジニ係数の増加傾向を元に、橘木教授は日本社会に経済格差が拡大していることを指摘したのです。

はじめに

近年、「格差」というキーワードが注目を集め、「格差」をテーマにした書籍の出版やマスコミの報道、専門家による議論などが活発になされるようになっています。

もともとは1998年頃から「中流崩壊」が話題となり、経済格差をめぐる議論が活発化したことにそのきっかけと考えられるのですが、
しだいに経済格差のみならず、教育格差・恋愛格差・結婚格差・家族格差・地域格差・希望格差など、さまざまな分野における「格差」の問題が、それぞれの専門家によって語られるようになりました。

2006年には「格差社会」という言葉が新語・流行語大賞のトップ10にランクインし、「格差」は社会的に広く認知される現象となったことを印象づけています。

「格差」という言葉の普及にともなって、それに付随する「二極化」や「勝ち組・負け組」などの言葉も広く普及するようになりました。 また、「格差」が生みだす下方層を象徴する言葉としては「ニート」「フリーター」「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」「下流社会」などの用語が、上方層を象徴する言葉としては「セレブ」「ニューリッチ」「富裕層」などの用語が、広く社会的に使われるようになりました。

しかし、このように「格差」という言葉が普及し、「格差」をめぐる議論が活発化するなかで、「格差」という現象をどのように捉えるかという点については、識者によって見解がかなり大きく異なっています。

そもそも現在の日本社会に格差は存在するのかしないのか?
格差が存在するとして、その程度は国際的に見てどのような
レベルにあるのか?
格差が存在することは良いことなのか悪いことなのか?
格差の原因はどこにあるのか?
格差の現状に対してどのような対策がなされるべきなのか?

これらの論点については、さまざまな専門家(あるいは素人)が
さまざまな意見を寄せており、現在その議論は百花繚乱状態にあります。

このブログは、そのような「格差」をめぐる百花繚乱状態の議論を整理し、「格差」問題についての思考の道標を示すことを目標にしたいと思います。

もともとが「格差」問題は、それを論じる人の価値判断や主観的態度を含む命題なので、誰もが納得しうる「答え」などはあるはずもありませんが、このブログがひとりでも多くの人にとって納得のできる思考の道標となることを目指して、読者の皆さんとともに試行錯誤していきたいと考えています。

読者の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

それでは、始めましょう。